こんにちは。

飯田橋のカウンセリング・オフィス、サードプレイスのナカヤマです。

今回の記事にはいくつかの不適切な表現がみられますが、どうぞ許してください。ノリコさんのことについて書くときには、きわどい表現を避けては通れないからです。

 

ノリコさんは南フランスで生活する60代の女性です。夏のシーズンになると日本に帰ってきて、サードプレイスに立ち寄って話しをしていかれます。

南フランスでノリコさんが何をしているかというと、絵を描いたり、モノを作ったりして生活しています。だから周りの人からは「クリエイティブな人」と見られています。確かにクリエイティブな女性なのですが、ノリコさんのクリエイティビティーはそこにとどまることがありません。ノリコさんは気持ちの収め方もまた、クリエイティブなのです。

 

アジア人の女性が海外で暮らしていると様々な苦労や理不尽なことに見舞われます。そのため、ノリコさんは腹を立てることに事欠かないといいます。

ある日、ノリコさんの自宅近くに新しいスーパー・マーケットがオープンしたときのことです。近くの通りでアフリカ系とみられる男性がそのスーパーのチラシを配っていました。ノリコさんがそのチラシが欲しくて手をだすと、男はノリコさんの手にチラシを渡すのではなく、それをつと道に落とすと、顎をしゃくって「道から拾い上げろ」というジェスチャーをしたそうです。

「このクソ男が」

このような屈辱的な仕打ちを受けて、ノリコさんは怒りました。

「このクソ男が、私はお前が耳をふさぎたくなるような、そしてお願いだからこれ以上言わないでくれと懇願するほどの悪態を知っているけど、今ここでそれを言わないでおいてやる、ありがたく思え。とココロの中で言ったね」と話しました。

いくら相手が失礼な態度をとったとしても、男に暴言(それもノリコさん流の)を浴びせたとしたら、彼女になにかの危害が及ぶかもしれません。私はノリコさんがその時、わめきたい気持ちを抑えて踏みとどまれたことを評価しました。

「それにしても、そんな失礼な態度をとられてどうやって自分の腹を収めたんですか」と私が聞くと、ノリコさんはウケケケケ、と笑って、

「アフリカ大陸を沈めることにした」と言い放ちました。

あまりに話しが飛躍したように思えた私が言葉を失っていると、ノリコさんは続けて、

「あいつらはみーんなミソジスト(女性嫌い)でメイルショービニスト(男性優位主義)のブタ野郎だからね」

と自信マンマンに言いました。そしてその後、ちょっぴり残念そうに「私、まだエジプトに行ったことがないからアフリカ大陸ごと沈めてしまうのはどうかなってちょっと考えたんだけど、背に腹は代えられないからね」と付け足しました。

そこでやっとのことで態勢を整えた私は、「そういうことってよくされているんですか」と質問しました(そういうことって国や大陸を沈める、という行為のことです)。

するとノリコさんはこともなげに「ああ、東ヨーロッパはもうないよ。あいつらティーフ(盗人)ばかりだから」と教えてくれました。

「南米も北米もすでに沈んでるよ」「ブラジル人はみんなレイジーだし、アメリカにはすごく珍妙なヘアスタイルした大統領がいるからね、あれには耐えられなかった」。そして、思い出したように「まだカナダはとってあるけど」と言いました。なんの慰めにもならない気がしました。

それを聞いて私は、ちょっとドキドキしながら言いかけました「そんなに沈めたら世界がなくなってしまうんじゃぁ・・」。

するとノリコさんが「オセアニアとかアジアはまだあるよ。アジアの人は優しいしね」と言うので、私は少しほっとしながら「そうか、良かった。私まだ中国の万里の長城に行ったことないので、いつか行けたらいいなって思っているんです」と言うと、ノリコさんは私に憐憫の表情を向けてこう言いました。

「中国か、あそこに関しては今考え中なんだ。私の言っている意味、わかるじゃろ(ノリコさんは日本の瀬戸内エリア出身です)。」

 

こうやってひとしきり話していったあと、世界の大陸の半分程度を既に沈めたノリコさんは爽やかに帰っていきました。

例えば「怒り」のようなネガティブな感情があっても、それを感じないようにしたり、抑えなければならない、と思っている人は実に沢山います。でも実際は、感情は我慢したり抑えたりすると、なくなるどころか、恨みのようになっていつまでも長く続いたり、自責感となって自分を苦しめたりするものです。

感情調整の方法は様々です。呼吸法をしたり、頭の中で数を数えるやり方が効く人もいます。また、友人に話したり、自分の好きなことをする時間をとることで気持ちを受け止められる人もいます。そして、ユーモアもまた、感情調整にはとても助けになるものです。

ユーモアはネガティブな感情を抑えるためにあるのではなく、ネガティブな感情と共にあることをノリコさんは教えてくれます。

今年の夏も、ノリコさんに会えることを楽しみにしています。

 

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ではまた!

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投稿: 飯田橋 サードプレイス

東京千代田区飯田橋にあるカウンセリングルーム、サードプレイスのブログです。

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